所長ブログ

2013年9月 5日 木曜日

非嫡出子相続分の違憲決定に関する雑感

既に新聞報道などでご存知の方が多いと思いますが、昨日、最高裁判所が、非嫡出子相続分を嫡出子の2分の1と規定する民法900条4号ただし書について、違憲とする決定を下しました(全文は、最高裁のホームページにあります。こちらにリンクを貼っておきます。)

要は、昔は、確かに規定の合理性はあったが、婚姻、家族の形態も様々になったため、国民の意識も多様化し、また、諸外国の状況も変化しているし、我が国の法制も変化していることを考えると、少なくとも、平成13年7月(問題になっている事件での被相続人が死亡した時です)には、900条4号ただし書は、違憲なものとなっていたと最高裁は、昨日、判断したわけです(「決定」なのは、事件が特別抗告事件だからです。)。

報道によると、非嫡出子の方は「『2分の1』と言われた自分の生きる価値を取り戻した」と喜びを語り、嫡出子の方は、母親が法の規定を支えに精神的苦痛に耐えてきたことを挙げ、「私たちにとって納得できるものではなく、非常に残念で受け入れ難い」とのコメントをされたそうです。気持ちとしては、どちらの気持ちもわかる話ですし、当職も、ご依頼者様が非嫡出子であれば、民法900条4号ただし書の合憲性を争い、逆にご依頼者様が嫡出子であれば、民法900条4号ただし書は、法律婚の尊重を考慮した合理的な区別と主張して、争うでしょう。

ただ、どちらかの当事者の代理人という立場ではなく、一人の法律家の立場としてみれば、非嫡出子で生まれることは、子どもがどうすることもできない事項ですから、結論としては、違憲とした今回の最高裁の考え方で良いと思います。法律婚の尊重は、法律上、配偶者には相続権を与え、婚姻関係にない者には相続権を与えないことで図られていますし、それに加えて子どもの相続分を差別する必要はないし、子どもの相続分を差別すべき問題でもないと思うからです。

直接聞いた話ではなく新聞報道ですから、どこまで正しいかは分かりませんが、もし報道通りの発言だったとすれば、嫡出子の方の発言は、気持ちはよく分かるけれども、母親の問題と自分の問題を混同しているとしか思えません。母親は、配偶者ですから2分の1の相続分があり、非嫡出子がいるかどうかで、本人の相続分の変わる問題ではありません。他方、(倫理的に故人が良いかは別として)生まれてきた非嫡出子は、自分で、非嫡出子であることを選んだわけではないし、同じ故人の、「子ども」という同じ立場にあるものである以上、子ども同士は平等に扱うべきと思うからです。

本件の最高裁の決定は、賛否はあると思いますし、どちらの言い分も、それなりには説得力があると思います。ただ、心情としてはともかく、法律家としては、少なくとも、「配偶者」といわゆる「2号」の問題は「配偶者」といわゆる「2号」の間の問題で、配偶者の子の問題ではない以上、「子」の間で優劣をつけるというのは違うと思います。

弊事務所でも、「相続問題」を取り扱っていますが、昨日の最高裁の決定は、立場にかかわらず、非常に重要なものであることだけは間違いありません。「相続問題」に限らず、弊事務所では、常に、重要な最新情報を押さえ、ご依頼者様の満足の得られるサービスの提供に努めておりますので、お困りの際は、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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