所長ブログ

2014年6月16日 月曜日

[書評]瀬木比呂志 民事訴訟の本質と諸相 市民のための裁判をめざして(日本評論社)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事訴訟の本質と諸相」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、明治大学法科大学院専任教授で、元裁判官である。裁判官時代から、民事訴訟法、民事保全法を中心に、いろいろなものを執筆されてきた方だが、この本は、瀬木教授の「研究執筆の総論に当たる書物」(はしがきⅰ頁)とのことである。

貴重な書物が出たと思う。というのは、刑事訴訟の分野では、「刑事学」という、ある種、刑法・刑事訴訟法の総論に当たる分野があったが、民事訴訟の分野では、かような総論に当たる分野がない。そこで、本書である。実務家から研究者に転身した著者が、プラグマティズムなどの視点を設定し、現代動物行動学や精神医学などの人間の分析に関する知見も用いながら、民事訴訟の本質を探っている。その際、「現代の民事法学には、民事訴訟の当事者とはどのような人々であるか、また、国民性や当事者の意識とさまざまな法的紛争との関わりいかんといった問題について分析、考察する視点は、残念ながら、法社会学も含めて乏しい」(135頁)や「日本の判例は、もっぱら法規を解釈し法理の宣明を行う部分に重点があり、紛争の核心となる事実及び法律問題を客観的な視点とできる限り広い視野から詳細に分析考慮した上で、右の(評者注:原文は縦書きなので、本記事では上記の)法律問題に関するなるべく正確な判断基準、具体的なメルクマールを立て、これに当該事件の具体的な事実関係を当てはめるという作業が必ずしも十分自覚的に行われていない傾向がある」(168頁~169頁)などの問題点も指摘している。

瀬木教授は、元裁判官ということもあり、理論一辺倒ではなく、現実も踏まえながら分析しており、実務家が、自己を相対化し、視点を得るという意味で、非常に有益な書物である。

民事訴訟は、弁護士にとって最大の業務であり、林浩靖法律事務所は、民事訴訟を、多数取り扱っており、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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