所長ブログ
2014年7月 1日 火曜日
[書評]大島堅一 原発のコスト-エネルギー転換への視点(岩波新書)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「原発のコスト」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。
「本書は、原子力発電をどうするかをコストの問題として考えようというものであ」り(はしがきⅰ頁)、著者は、立命館大学国際関係学部教授で、専門は、環境経済学である。
思想的な問題や情緒の問題としてではなく、「コストの問題」としてとらえているので、他の発電方法との比較で、発電量に比してコストが大きければ、原子力発電は止めるべきとなる。そして、コスト分析すると、「過去四十一年間で最も安かった電力は一般水力」(104頁)であり、「地元自治体を原発がらみの資金漬け」(110頁)にするほど政策コストを用いている「原子力は火力と比べて四三倍、水力と比べて一七倍の政策コストがかかって」おり(111頁)、「原子力発電は、事故コストを含まなくても、他電源に比べて高いのであるから、事故のことを考慮すれば、経済性がないことは明白」(114頁)であることを示した上で、需給の関係からも原子力発電は止めるべきであることを論じている。
本書の最大の意義は、これまで安価な電力と思われてきた原子力発電が、実は、高コストな電源であることを実証的に示したことだろう。当職は、原発事故被災者救済の事件もやらせて頂いているが、皆様、本当にご苦労されており、その被害が甚大なものであることを示している。原子力発電は、本書で論じられているように、高コストであり、更に、一度事故が起これば、多くの方に甚大な被害を強いる以上、正義の観点からも、止めるべきであろう。
本書で得た知識も活かしながら、弁護士としてさらに頑張る所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所