所長ブログ

2014年10月 6日 月曜日

[書評]我妻榮 債権各論上巻(民法講義Ⅴ1)(岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「債権各論上巻(民法講義Ⅴ1)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、言わずと知れた我妻名誉教授の民法講義の一部をなす基本書で、民法学の金字塔というべき書物である。書かれたのが昭和29年と、もう60年前で、増刷の際に若干の補正はなされているとは思うが、それでも、基本となる情報は60年前のものであるから、勿論、最新判例や法令の改廃などの情報が反映されているはずもない。

しかしながら、この本(に限らず、我妻名誉教授の民法講義シリーズ全体)の有用性は、情報が古くなっても失われるものではないと思う。我妻名誉教授の民法講義は、民法学ならず、経済史学やマルクス主義などの周辺分野の知識も踏まえて、現実に即した解釈になるように配慮されている。例えば、「金融資本による全産業の支配という現象を生じるに至りつつある」(16頁。なお、旧字体は、現在の字体に直した。)という記述は、明らかに、レーニンの「帝国主義論」を踏まえての記述である。そのために、知識として持っていない問題が生じたときに考えるヒントが詰まっているのである。最近の基本書は、勿論、有用ではあるが、それは「情報」としての意味においてであり、「知識」という意味で、なお、我妻名誉教授の民法講義シリーズの有用性は失われていないと思う。

民法は、弁護士の実務において、最も利用頻度の多い法律といってよい。当職も、考えたことのない問題に直面したときには、まず、確認するシリーズである。これからも、必要なときには、何度でも参照したい。

林浩靖法律事務所は、民事事件を多数取り扱っており、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。破産申立てに限らず、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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