所長ブログ
2015年4月13日 月曜日
[書評]宇賀克也 行政法概説Ⅱ 行政救済法(第5版)(有斐閣)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「行政法概説Ⅱ 行政救済法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、東京大学大学院教授であり、以前書評した「改正行政事件訴訟法[補訂版]」(該当する記事は、こちら)の著者で、現在、脂の乗り切った世代の行政法学者である。本書は、3冊ものの行政法の教科書のシリーズの1冊である(ただし、地方自治法は、別途、「地方自治法概説」として出版されているので、実質的には4冊もののシリーズと考えた方が実態にあう。)。もっとも、「初めて行政救済法を学ぶ読者」(はしがきⅱ頁)のみならず、「法曹や国・地方公共団体で行政実務にたずすぁる方々にとって必要な応用的内容の情報も提供」(はしがきⅱ頁)しており、実務的な利用にも耐えられるように配慮されている。現在の司法試験では、行政法は必修科目であるから、行政法の学習は必ずしている(もっとも、行政法は商法と並んで、受験生の出来は最悪の部類に属するようではあるが)が、当職が受験したころは、行政法は司法試験の科目には入っておらず、きちんと勉強する機会には恵まれなかった。
そのため、当職にとって、入門者用でもあり、また、実務での利用に耐えうる本書のような書物は大変にありがたい書物である。入門者に配慮していることは、例えば、序論で、行政救済法の体系をきちんと説明(1頁以下)していることに表れているし、実務的な点に配慮していることは、例えば、旧政務調査費にかかる領収書の扱いについてのコラム(252頁~253頁)が挿入されている点からも分かる。もっとも、改訂の際のミスなのか、253頁辺りから、標題を入れる位置を間違えたと思われる箇所が数カ所あるのが残念ではある。
本書は、行政救済法に関する知識をコンパクトかつ分かりやすくまとめ、かつ、情報は網羅的という理想的な教科書である。特に、行政救済法は、在留資格に関する訴訟も行政訴訟ですし、原発事故への国への国家賠償請求にも関係する分野です。このようにいろいろな分野で行政との関係が問題になることがありますが、林浩靖法律事務所では、行政救済法に関する知識もきちんとフォローしていますから、何か困ったことがあるときは、早めに、東京・池袋所在の弊事務所にお問い合わせください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所