所長ブログ
2015年4月27日 月曜日
[書評]田辺文也 叢書 震災と社会 メルトダウン-放射能放出はこうして起こった(岩波書店)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「叢書 震災と社会 メルトダウン-放射能放出はこうして起こった」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、社会技術システム安全研究所を主宰する原子力の専門家である。その著者が、「限られた情報からでも市民自らが科学的に分析・推論して状況を把握し、判断することは極めて重要」(付録2・1頁)という観点から、執筆された書物である。平成24年の出版と、比較的初期の書物であるため、十分な分析ではなく、推定になっている部分もあるが、「基本的には独自に、観測データを素直に読むことで見えてくる事故の真実を明らかにする」(ⅳ頁)というスタンスをとっている。
ここで提起されている問題点は、大きく2つあり、「過酷事故(シビアアクシデント)における基本戦略と戦術を定めているというべき手順書がありながら、はたして東電の対応はその手順書に照らして適切であったか」(ⅶ頁)という手順書問題と、2号機格納容器が「地震による揺れとそれに不可的な負荷として逃し安全弁SRVからの蒸気流入による動的荷重」(84頁)により破損していたという2号機の地震動による破損問題である。
平成24年の出版と比較的初期の書物であるが、ここで提起された問題は、福島第一原発事故の原因を、全て津波に求めたい電力業界や国の思惑をよそに疑念が深まるばかりである。
当職も原発事故被災者の救済に取り組んでいる者の一人であるので、今後の研究の進展に期待したい。そして、新たな事実が明らかになれば、それも東電や国の責任追及の論拠に加えたいと思います。最新情報がでてきたときに、そのキャッチアップを怠らないようにして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。
また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所