所長ブログ

2015年6月 8日 月曜日

[書評]外岡秀俊 3・11 複合被災(岩波新書)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「3・11 複合被災」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、元朝日新聞の記者で、現在は、フリージャーナリストである。「震災後亥年間の経過を踏まえて」(284頁)「東日本大震災について、何が起きたのかを、できるだけわかりやすく、コンパクトに伝えることを目的に書かれ」た(はじめにⅱ頁)書物である。

著者が、ジャーナリストということで、「各章の1では私(評者注:著者のこと)が見聞きしたルポを置き、それに続いて2以降で全体の輪郭や、さらにそこから何を教訓として引き出し、何が課題として残っているのかをまとめ」ている(はじめにⅶ頁)ので、具体的な事実と、全体像や課題、教訓が結びつきやすく、イメージを沸かせることができる書物になっている。

東日本大震災は、福島県・宮城県・岩手県を中心として広範囲に生じた津波被害・液状化被害等と、東京電力福島第一原発事故に基づく放射能汚染による被害を生じさせた。自然災害と原発事故が同時に発生した「3・11は、かつて世界が経験したことない複合災害」(15頁)であり、「日本ではかつてないほどの広域・長期にわたる災害」(15頁)である。このような災害の全体像を、具体的事例に結び付けて論じている点で、有用性の高い書物といえる。もっとも、原発事故については、政府事故調中間報告書は出されていたものの、この事故についての最重要の基本文献である国会事故調報告書が提出されていない段階での記載のため、やや信用性に欠ける記述もあるので、その点には、留意する必要がある。

当職は福島原発事故の被害者救済に関わっているが、そのために、原発事故とそれを巡る事実関係には詳しくなるが、逆に、福島県・宮城県・岩手県を中心として広範囲に生じた津波被害・液状化被害等についての知識に欠ける面があります。しかし、周辺情報を押さえておくことも重要ですので、周辺情報にもきちんとキャッチアップして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。

また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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