所長ブログ

2015年6月15日 月曜日

[書評]中村哲 ペシャワールにて 癩そしてアフガン難民(増補版)(石風社)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「ペシャワールにて 癩そしてアフガン難民(増補版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、医師でペシャワール会の現地代表である。1984年にペシャワールに赴任して、以後、ハンセン病を中心に貧困層の診療に関わってきた著者が「ペシャワールを語ることは、人間と世界についてすべてを語ることでと言っても誇張ではない」(250頁)という視点から、草の根の国際交流の在り方を、パキスタン北西辺境州におけるハンセン病の診療の中で見た、国際協力論であり、イスラム社会論であり、アジア近代史論である。

国際協力について、「実際に大きな力になるのは...小さな工夫の積み重ね」(97頁)であり、「国際援助が見栄えのするものに目が行ったり、その土地に住む人間を忘れて事業そのものが先行する」(68頁)ことを批判する。このような問題は、国際協力だけでは。大震災の復興事業にも共通するものであり、著者の具体的な経験から導かれたものが普遍性を有しているように思われる。
著者が、パキスタン北西辺境州に逃れたアフガン難民のハンセン病患者について述べていることは、福島第一原発事故の被災者に反復しているように思われる。国際援助を復興事業に置き換えれば、まさに再現であろう。歴史は反復することを実感するものである。

業務と無関係に、ただ書店で目にして手に取った書物でしたが、国際協力の在り方、人間の生き方、西南アジアの歴史、そして、原発事故の被災者との類似性と多くの点で考えさせられる書物であった。考えさせられる点が多い書物であり、これからも読み直しながら、いろいろ考えていきたい。

弁護士という仕事は、依頼者の皆様のために頑張るのは勿論ですが、生じているトラブルは社会情勢が反映される面があります。法律以外の点についても、常に関心を払っておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、正義を守る法律事務所である東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖




投稿者 林浩靖法律事務所

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