所長ブログ
2015年7月 1日 水曜日
[書評]寺尾紗穂 原発労働者(講談社現代新書)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「原発労働者」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、シンガーソングライター兼エッセイストの方で、専門的なトレーニングを受けていないからか、整理が悪く、内容がややとりにくくなることがある。しかしながら、これまで、原発問題で欠けていた「現場で働く人間が何を感じているか、実際の原発労働がどのようなものであるか、という視点」(13頁)からまとめられた6名の労働者の証言集であり、2名は仮名であるが、残る4名は実名で証言しており、今までなかった視点を埋めるという意味で、存在意義の高い書物であると考える。
例えば、「福島原発の建設とともに育ち、東電学園へ入学、福島原発の『炉心屋』として、責任ある仕事を任されてきた木村さんの証言は、日常化するデータ改竄の現実、東電の実態、増え続ける核物質の問題と東電社員の意識など多岐にわた」る(148頁)ように、実際に原発に勤務したことのある者でないと分からない証言がいろいろ含まれている。
「現代の原発は、まさに世界からポツリポツリと集まる貧しい労働者の違法な大量被曝によって維持されている」(160頁)ことが分かる書物である。
原発に賛成の方にも、反対の方にも、そして、意見を決められない方にも、一度は手に取ってもらいたいと思える書物である。どんな立場の方にも、新しく見えてくるものがあると思う。
当職が関わっている福島原発事故の被害者救済と直接関連する訳ではありませんが、参考になる部分はありました。周辺情報もきちんとキャッチアップして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。
また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所