所長ブログ

2015年10月15日 木曜日

[書評]村井章介 世界史の中の戦国日本(ちくま学芸文庫)

1冊、業務と関係のない書物の書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「世界史の中の戦国日本」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、東京大学大学院人文社会系研究科教授であり、特に、日本中世史については興味深い論考を多数出されている教授である。

本書は、ちくま新書「海から見た戦国日本―列島史から世界史へ」(以下、「元版」という。)として刊行されていたものの文庫化であり、文庫化にあたり「附章 島津資料からみた泗川の戦い―大名領国の近世化にふれて」が加わっている。

元版は、当職が大学生であった頃に出版されたものであり、興味深く読んだ。取り扱っている時代は、16世紀から17世紀前半という「人類史上はじめて世界史と呼べるような地球規模の連関が端緒的に生まれた時代」(12頁)であり、時代区分でいえば、戦国時代から安土桃山時代であるが、本書は、周辺地域、具体的には、アイヌ・北方、琉球(沖縄)、朝鮮との関係、明との関係を中心に扱っているので、織田信長の名前は登場しない。さすがに中央に豊臣秀吉政権という統一権力が出てくると、文禄・慶長の役の対外関係に中央政権が関わってくるので、豊臣秀吉や徳川家康の名前は登場してくるが、特に、家康は完全に脇役としての登場であり、一般の歴史の書物とはかなり趣が異なるものである。

本書が取り扱う「中世から近世への移行期は、社会のありかたが劇的に変貌を遂げた時代」(226頁)であり、そのための痛みを伴った時代であった。著者が文庫版あとがきで述べているように「現在私たちは、16~17世紀の社会変動にも似た激動の入口に立っている」(289頁)のであり、同じように激動の時代であった中世末期~近世初期の歴史に学ぶ点は大きいだろう。

歴史にきちんと学び、必要なときは困難とも闘いながら、今できることを一つずつしていきたいと思います。何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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