所長ブログ

2015年10月29日 木曜日

[書評]木谷明編著 刑事事実認定の基本問題(第3版)(成文堂)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「刑事事実認定の基本問題」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の編著者は、元裁判官で、元法政大学大学院法務研究科教授であり、現在は弁護士である。刑事裁判官として、良質な裁判官として知られた方で、無罪判決も積極的に書かれ、現役中に約30件の無罪判決を確定させた実績を持つ。本書は、その木谷元裁判官と木谷元裁判官が指導された後輩の裁判官による刑事事実認定に関する論文集であるが、刑事事実認定における基本的論点は、ほぼ網羅されており、刑事事実認定に関する基本書として使える書物である。

刑事裁判では、情けないことだが、検察官の追認機関化しているとしか思えない裁判官も目立つのは間違いない。確かに、事件によっては、弁護人の目から見ても、被告人の弁解が不合理としか思えない事例もないわけではないが、特に上訴までして争っている事件では、被告人の弁解が全く不合理とは言えず、少なくとも、排斥するなら排斥するできちんと判断を示して欲しいと思う事件も多い。しかしながら、ひどい判決になると「信用できない」の一言で排斥されており、実質的な理由が全く示されていないこともある。本書は、刑事裁判における事実認定について一番重要なことは、「裁判官が、刑事裁判における最大の不幸である『えん罪の発生』を『何が何でも阻止するのだという気構えを持つこと』、そして『被疑者・被告人という弱い立場に置かれた者の気持ちを理解すること』に帰着する」(33頁~34頁)という視点から、事実認定について論じており、裁判官のみならず、実務家やロー・スクール生にも役立つと思う。

林浩靖法律事務所では、刑事事件に限らず、常に研鑽を重ねて、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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