所長ブログ
2016年3月21日 月曜日
[書評]萩原遼 朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀(文春文庫)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、元赤旗記者で、平壌特派員も務めたことのある人物である。かかる著者が、赤旗退職後に、ワシントンの国立公文書館所蔵の北朝鮮からの奪取文書を通覧して、「今の南北朝鮮の問題を解くカギ」(11頁)である「朝鮮戦争の真の姿を朝鮮労働党、朝鮮人民軍、人民共和国政府などの内部文書によってまとめた」(9頁)書物である。
北朝鮮という秘密主義の国の情報は限られているため、謎であった部分に光を当て、「北の人民軍が開戦直前にどう移動し、どこにどう配置されていたか」(201頁)を突き止め、「朝鮮戦争は北側が周到な準備のすえに謀略的に南側に武力攻撃を加えたもの」(10頁)であることを明らかにしている。北の文書によって証明しているところがポイントであると考える。
そして、「朝鮮戦争という数百万人もの人命を失った悲劇のおこりを調べていくうえで、その悲劇のそもそもはどこなのか、ということになると、やはりソ連軍の北朝鮮占領と、朝鮮人民になんの足場も持たないソ連軍の子飼いのキム・ソンジュがつれてこられた事実をさけて通るわけにはいかない」(58頁)という認識から、ソ連による北部朝鮮の占領以降の朝鮮戦争の前史も、「ソ連による二十万トンのコメの供出命令」(70頁)など詳細に描き出している。
著者の分析は、「マッカーサーの米極東軍司令部はすべて中国革命の進展とそれに鼓舞された金日成の動きにあわせて動いていた」(294頁)として、「金日成が隠密にすすめてきた朝鮮戦争の陰謀は、マッカーサーの極東米軍によって一年前からことごとくつかまれていて、かれらの大謀略に完全に利用された」(10頁~11頁)という結論に至る。この視点に提示も重要であると考える。
朝鮮半島は、日本から最も距離の近い隣国であることは、好き嫌いの問題とは別であり、否定のしようがない。そして、朝鮮戦争は、極東史において重要なエポックである。
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弁護士 林 浩靖
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