所長ブログ
2016年5月 2日 月曜日
[書評]除本理史 公害から福島を考える-地域の再生を目指して(岩波書店)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「公害から福島を考える」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、以前書評をした「福島原発事故賠償の研究」(日本評論社)(該当する記事は、こちら)、「原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか」(ミネルヴァ書房)(該当する記事は、こちら)の編著者の一人である大阪市立大学大学院経営学研究科の除本理史教授である。
本書は、「福島原発事故由来の放射能汚染はいまや国内『最大の環境問題』」(1頁)という観点から、公害事件の教訓を踏まえて、福島第一原発事故を考えようという書物である。ただ、「被害者救済の前提は『被害の実態把握、原因の究明と責任の明確化』」(103頁)であるにもかかわらず、福島第一原発事故の場合、そもそも被害者数さえ正確に把握されておらず、責任を負うべき東京電力株式会社と国は、責任の曖昧化に腐心しているのが実情である。本来は、「賠償と復興過程を対立的に捉えるのではなく、復興を進めながら、なお残る被害に対して適切な賠償を実施すべき」(177頁)でありながら、政府と東電は、賠償の打切りをどのように行うかしか考えていないように思われる。
本書の著者が、主に、川内村と飯館村の状況を中心に研究しているため、被害地域の全てに同じ議論が成り立つと言えるかには疑問の残るところもあるが、福島第一原発事故の「損害」が何かを考える上で有用な書物であることは間違いない。本書で得た知識も生かして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。
また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所