所長ブログ

2016年9月 2日 金曜日

[書評]三浦綾子 塩狩峠(新潮文庫)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「塩狩峠」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

当職は、あまり小説を読む方ではないが、それでもたまに無性に小説が読みたくなることがある。今回は、キリスト教徒である作家である著者の代表作である本書を読んだ。

優れた小説には、複数のテーマが隠れていることが多い。本書の解説では、佐古純一郎氏は、「『犠牲』という問題をテーマ」(455頁)と解説している。勿論、「犠牲」という問題という観点から読むことは問題なく可能である。ただ、当職は、「士族の子と町人の子とどこがちがうというのだ?」(19頁)、「人間というのはね、両手両足がなくても、目がみえなくて、耳がきこえなくても、一言も口がきけなくても、みんな同じ人間なのだよ」(29頁)という言葉から、平等や偏見の問題について考えされられた。人間には、現実として差異がある中で、なぜ平等という概念を考える必要があるのかという問題といっても良い。
日本国憲法14条には、平等が規定されている。その根源的な意味を考えさせられる。

本書は、もともと、「日本基督教団出版局から出ている月刊雑誌『信徒の友』に連載された小説」(453頁)であり、著者のキリスト教信仰と相まって、西欧的な考え方が踏まえられている。そして、本書の「主人公永野信夫は、いうまでもなく小説の中の永野信夫であって、実在した長野正雄氏その人そのままではない」(442頁)のだが、明治時代に実際にあった事故を下敷きにしてかかれており、時代背景も考えると、極めて先進的な考え方を取り入れていたと思う。

優れた小説は、いろいろなことを考えさせてくれる。今回は、全く業務に関係のない書物の書評をしましたが、それでも、弁護士としても考えさせられる記述はありました。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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