所長ブログ

2016年9月 9日 金曜日

[書評]青木冨貴子 731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く(新潮文庫)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

どの国にも、歴史に恥ずかしい部分があるが、わが国の場合、その一つが「731部隊」と言われた細菌戦部隊だろう。本書は、フリーランス・ジャーナリストである著者が、731部隊を率いた石井四郎元陸軍中将のノートという第一級の第一次資料を入手して、731部隊の全貌を示したノンフィクションである。

「細菌学の分野では必ず生体解剖じゃないと効果がない」(132頁)中で、占領地である満州(中国東北部)の平房に731部隊を設け、人体実験を行っていた石井四郎。しかしながら、彼は、戦犯として裁かれなかった。「日本の細菌戦データの価値は"戦犯"訴追より、国家の安全保障として遥かに重要」(435頁~436頁)と考える米国の思惑、「米国を押しのけて、石井部隊の研究を横取りしようと執念を燃やすソ連の圧力」(15頁)、「戦犯の追及を逃れるためには、占領軍から確約を貰った上で知っている情報を提供するしかない」(238頁)731部隊の関係者の思惑が絡み合う中で、戦犯としての訴追を免れ、「のちの『ミドリ十字』」(482頁)となる「日本ブラッドバンク」への流れを丹念に読み解いている。

歴史の恥部を見据えることは、避けて通るわけにはいかないし、このようなところに目をつぶって、自国礼賛を行うようでは、国際社会では尊重されない。

今回は、全く業務に関係のない書物の書評をしましたが、それでも、わが国の歴史押さえることは、必須の前提である。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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