所長ブログ
2017年2月 1日 水曜日
[書評]新井章・松村高夫・本多勝一・渡辺春己 「事実」をつかむ-歴史・報道・裁判の場から考える(こうち書房)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「『事実』をつかむ-歴史・報道・裁判の場から考える」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者のうちは、本多勝一氏は元朝日新聞記者である著名なジャーナリスト、新井章氏と渡辺春己氏は弁護士、そして、松村高夫は慶応義塾大学名誉教授である。
当職は、約20年前、大学3年生のとき、松村教授の「イギリス社会科学の系譜」という講義を受講した。たしか、夏休みの課題だったと思う。本書を読んでレポートを出すという課題が出された。そのときは、本書の内容が分かったようで分からなかった。当時の当職は、大学生であり、司法試験受験生(この年、初めて司法試験を受験した。択一試験には合格したが、論文試験で不合格だった。)であった。当時の司法試験では法解釈力が試され、事実認定の勉強は、司法研修所で行うという立て付けで制度設計がされていたから、事実認定の問題については、基本的な知識もなかった。
その後、司法修習を経て、弁護士になった後、10年以上が経過した。今になると、「ルポ・裁判・歴史学のいずれも前提としての事実の認定と、その事実に対する評価の二段階に分け判断を下すという同一構造をもっている」(5頁)として、事実認定の在り方を考えようとすることが重要なことであることが、よく分かる。
そして、「裁判の問題点はおおよそ次のような類型化が可能」(125頁)とされた上で、①行政追随の判決、②一般民事事件などにみられるズサンな判決、③刑事裁判にみられる刑事裁判原則(無罪推定と検察官の立証責任など)の無視があげられ、それが現在も変わっていないと思われることに絶望を感じざるを得ない。そうは言っても、技術を磨き、少しでも改善できるように努力を続けることは、弁護士にとって、当然の義務である。
「法律実務家にとっては、裁判所に背景事情を含め多面的に社会的事実を認識させるよう証拠方法を採用させること、証拠の評価、反対尋問の方法、各事件の特殊性や経験則の探究などが重要な役割をもっている。」(281頁)これは、現在でも当てはまると考えるし、弁護士として、常に思い続けなければならないことと思う。
林浩靖法律事務所では、事実認定の技法についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所