所長ブログ

2017年2月 8日 水曜日

[書評]細田衛士・横山彰 環境経済学(有斐閣アルマ)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「環境経済学」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、細田衛士慶応義塾大学教授と横山彰中央大学教授の共著である。

当職は、約20年前の大学生のとき、学部生として、本書の共著者の一人である細田教授の環境経済学の講義を履修した。現在、日本最大の環境問題といって良い福島第一原発事故の損害賠償請求訴訟に関わっているが、学生時代から環境問題には関心があったのである。もっとも、細田教授の講義は、現実に発生している環境問題を示しながらではあるが、経済理論、特に応用ミクロ経済学としての理論問題が難しく、大学生だった当職は、単位をとることができなかったのである(言い訳をすれば、司法試験の受験の年で、情報を頭に叩き込めば単位をとれる科目ではなく、理論の理解が必要な科目を受講したことに無謀な面があり、その結果という面があるが。)。

本書は、当職が大学卒業した後に、出版された書物であるが、細田教授の執筆部分には学生時代に聞いた話がまとまっており、学生当時、本書があれば良かったと思わなくはない。ただ、環境問題は、学際的な部分があり、法律問題を考えるに当たっても、環境経済学、環境社会学、生物学などの周辺知識の概略をつかんでおくことは必要である。そこで、本書を読むことにした。

「環境問題とは、自然を顧みない経済活動の結果、人間と自然環境との間に齟齬が生じた状態」(2頁~3頁)と把握した上で、「地域規模のみならず地球規模で起きている環境問題を解決するためには、市場経済の基本に立ち戻って問題の核心を見据えなければならない」(11頁)と指摘する。
そもそも、市場経済による資本主義社会のままで環境問題を解決できるのだろうかという根本的な疑問はあるが、少なくとも、当面は市場経済を前提に対策を考えなければならない。そうである以上、「重要なことは、資源の過剰利用は経済的な背景の中で起きるということの認識であり、同時に資源ストックの適正な管理は、経済的な条件を無視しては行い得ないということのりかいなのである」(140頁)ということを押さえる必要がある。

本書は、環境問題の解決のために経済理論が有効であることを示すもので、環境経済学の概説書としては、よく出来ていると思う。

経済学は、法学の隣接学問の1つであり、その理解は、法学の理解も豊かにしてくれるものといえます。林浩靖法律事務所では、法律に限らず、隣接分野についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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