所長ブログ
2017年6月14日 水曜日
[書評]佐伯仁志 刑法総論の考え方・楽しみ方(法学教室LIBRARY)(有斐閣)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「刑法総論の考え方・楽しみ方(法学教室LIBRARY)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、東京大学教授で、ご専門は刑法である。刑法は、行為無価値論と結果無価値論の対立があるが、著者である佐伯教授は結果無価値論の立場にたつ。もっとも、その体系は、著者の師匠である平野竜一東京大学名誉教授に忠実で、責任構成要件を認める立場なので、判例・実務が採る行為無価値論からも、(若干注意して読むべき部分はあるが)違和感なく読むことは可能である。
本書は「読者の方に、刑法総論の基本的な考え方を理解していただき、自分で考えることの面白さをわかっていただく」いことを目標として」(はしがきⅰ頁)、法学教室で行われた連載をまとめたものである。
本書はいわゆる体系書ではないので、内容は網羅的ではないが、重要な論点は概ね網羅され、基本書をかみ砕いて説明したり、あるいは、隠れた前提や進んだ問題を明らかにするなど、副読本として使われることが想定されていると思われる書物であるが、刑法総論の知識だけでなく、「学説を評価する際にも、個々の見解の細かな違いを気にする前に、まず大づかみに違いを把握することが大事である」(222頁)、「判例研究においては、判例理論の検討だけでなく、実際の適用範囲を明らかにすることも、現実の法(Law in Action)を認識するという意味で重要である」など、学習上の注意点も示されている。
林浩靖法律事務所では、本書に限らず、常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
投稿者 林浩靖法律事務所