所長ブログ
2015年7月29日 水曜日
[書評]鬼頭秀一・福永真弓 編 環境倫理学(東京大学出版会)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「環境倫理学」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
この本の編者の鬼頭秀一氏は東京大学名誉教授、福永真弓氏は東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授であり、いずれも環境倫理学が専門である。
この本は、「人間vs自然、あるいは、人間中心主義vs人間非中心主義という『二項対立図式』」(2頁)を超えて「恵みも禍も、リスクもサービスも、自然的環境も、社会的環境も、精神的な環境も、全体として統合的に捉えて、しかも動的(ダイナミック)に全体をマネジメントしていく視点、そのような普遍的な原理を提供しようとしている」(277頁)「現時点での環境倫理学の決定版」(はしがきⅰ頁)といえる書物である。
環境法という法分野があるが、環境法は、環境政策と密接に結びついており、その「環境の政策に関わる全ての問題に対して、その理念的な枠組み、基準などを提供するのは、環境倫理」(270頁)であり、その意味で、環境法の裏付けとなる学問である環境倫理額の決定版であり、何度も読み返したい書物である。
林浩靖法律事務所では、本書に限らず、法律自体の情報はもちろんのこと、そのバックボーンとなる情報まで把握して、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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2015年7月22日 水曜日
[書評]保坂直紀 謎解き・津波と波浪の物理(講談社ブルーバックス)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「謎解き・津波と波浪の物理」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
この本の著者は、東京大学海洋アライアンス上席主幹研究員である。
この本は、「数学的な取り扱いがかなり難しい」(5頁)水面の波を「数式を使わずに、ぎりぎりのところまで言葉で説明」(5頁)することを試みる書物であり、「ものごとをうんと単純化して、まずは基本を押さえる」(30頁)という観点から、「津波」と風が作り出している波である「風波」を説明する書物である。
「どのような仮定をするか、どのような仮定ができるかは、いまどんな減少に着目しているかということと密接に関係する」(68頁)から、「単純化と引き換えにどのような現象が抜け落ちるかを、はっきり意識する」(68頁)ことが必要なことを明示するなど、基本的な理解を試みる説明をしつつ、限界をきちんと明示している良書である。
東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故では、地震、津波が大きな原因となりました。
当職は、福島原発事故被災者の損害賠償請求訴訟に携わっているが、東京電力や国の責任を明らかにする上で、その原因となった地震・津波の基礎知識は、主張の検討の上でどうしても必要なので、ありがたい書物です。また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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2015年7月15日 水曜日
[書評]淡路剛久・吉村良一・除本理史編 福島原発事故賠償の研究(日本評論社)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、淡路剛久・吉村良一・除本理史編集の「福島原発事故賠償の研究」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
この本は、当職も何度か研究会に参加させて頂いている福島原発事故賠償問題研究会での報告に基づく論文集であり、編者を含む17人による20本の論文と各地の集団訴訟の状況を示す資料が掲載されている。
2011(平成23)年3月11日の東日本大震災を契機に東京電力株式会社の福島第一原子力発電所で発生した原発事故は、広範かつ深刻な被害をもたらしている。その「被害全体の特徴としては、①類例のない被害規模の大きさ、②被害の継続性・長期化、③暮らしの根底からの全面的破壊、④被害の不可予測性など」(2頁)があり、主に交通事故を念頭に発達してきた「これまでの損害賠償法理論だけでは解決できない様々な問題」が生じている(はしがきⅰ頁)。
そして、福島原発事故賠償問題研究会には、原発事故被災者の救済に取り組んでいる全国の弁護団も参加しているので、本書を弁護団で一括購入し、それを当職も分けて頂いたわけであるが、「問題解決を目指すための理論的な手がかりを示す」(はしがきⅱ頁)ための論文集であるから、原発事故被災者の救済に取り組んでいる当職のような弁護士には、まさにバイブルになる書物である。
この分野は、日々、状況が変わっていると言っても過言ではなく、情報のキャッチアップも大変ではあるが、最新情報を常にキャッチアップして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。
また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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2015年7月 8日 水曜日
[書評]東郷和彦 北方領土交渉秘録-失われた五度の機会(新潮社)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは「北方領土交渉秘録-失われた五度の機会」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、元外務省欧亜局長であり、対ソ、対ロ外交の最前線に立っていた人物である。鈴木宗男事件との関係で、外務省を離れ、京都産業大学法学部教授に就任している。その東郷元局長の外交官時代の回想録であり、特に、ソ連にゴルバチョフ書記長が登場した後、森内閣退陣までの間にあった北方領土の返還を実現する「五度の機会」についての回想録である。
「ソ連邦崩壊からロシア連邦の形成にいたる歴史の激動の中で、日ロ領土交渉の突破口が開き得るかも知れない千載一遇の窓が開かれた」(173頁)時代に、なぜ、日本は北方領土を回復することが出来なかったのかを明らかにする書物である。そこには、外交には「幅広く根の深い人間関係」(195頁)の必要性や、交渉術の要諦などが記載されながら、交渉の経緯が綴られている。
特に、日本にとって残念だったのが、橋本龍太郎総理の退陣(参議院選挙の自民党の敗北が理由=国民が原因)と小泉純一郎内閣での外務省内の混乱(政治家・官僚の内部闘争が原因)ということになろう。どちらかがなければ、北方領土の回復は可能だったのではなかろうか。そして、その後は、資源価格の高騰による景気回復やクリミアの併合などのロシアの国力強化と、福島第一原発事故やアベノミクス等の米国追従による売国政策による日本の国力低下で北方領土の回復交渉の機運すら遠のいているように思える。
本書は、北方領土問題や近時の日ロ外交史の基本書といって過言ではないであろう。同時に、優れた回想録でもある。
弁護士という仕事は、依頼者の皆様のために頑張るのは勿論ですが、生じているトラブルは社会情勢が反映される面があります。法律以外の点についても、基礎事項をきちんと学んでおりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、正義を守る法律事務所である東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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2015年7月 1日 水曜日
[書評]寺尾紗穂 原発労働者(講談社現代新書)
1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「原発労働者」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。
本書の著者は、シンガーソングライター兼エッセイストの方で、専門的なトレーニングを受けていないからか、整理が悪く、内容がややとりにくくなることがある。しかしながら、これまで、原発問題で欠けていた「現場で働く人間が何を感じているか、実際の原発労働がどのようなものであるか、という視点」(13頁)からまとめられた6名の労働者の証言集であり、2名は仮名であるが、残る4名は実名で証言しており、今までなかった視点を埋めるという意味で、存在意義の高い書物であると考える。
例えば、「福島原発の建設とともに育ち、東電学園へ入学、福島原発の『炉心屋』として、責任ある仕事を任されてきた木村さんの証言は、日常化するデータ改竄の現実、東電の実態、増え続ける核物質の問題と東電社員の意識など多岐にわた」る(148頁)ように、実際に原発に勤務したことのある者でないと分からない証言がいろいろ含まれている。
「現代の原発は、まさに世界からポツリポツリと集まる貧しい労働者の違法な大量被曝によって維持されている」(160頁)ことが分かる書物である。
原発に賛成の方にも、反対の方にも、そして、意見を決められない方にも、一度は手に取ってもらいたいと思える書物である。どんな立場の方にも、新しく見えてくるものがあると思う。
当職が関わっている福島原発事故の被害者救済と直接関連する訳ではありませんが、参考になる部分はありました。周辺情報もきちんとキャッチアップして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。
また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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