所長ブログ

2017年1月25日 水曜日

[書評]大村敦志 家族法(第3版)(有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「家族法(第3版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、東京大学教授であり、民法全分野にわたる教科書も書かれている。本書は、「家族法」と題された書籍であるが、相続法分野は含まれていない。その理由として、著者は、「相続法は親族法とは異質の要素を含む」(15頁)ことを挙げている。実際、相続法には、財産法と隣接する部分があり、純粋な身分法学の話とは言えない部分がある。
そして、著者は、「親族法を指して、『(狭義の)家族法』」(15頁)と呼ぶことを提案し、「民法以外の諸法に含まれる規範-さしあたり家族政策法と呼んでおく―を含め家族に関する規範の総体を『広義の家族法』」(15頁)とする。
そのため、本書は、「家族法」という書名ではあるが、その実質は「親族法」の書物であるが、その分析には参考になるところが多い。特に周辺の法律に丁寧に配慮しているところは、新たな見方を与えてくれる。

林浩靖法律事務所では、判例・通説だけでなく、新たな見方にも常に目を配り、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2017年1月18日 水曜日

[書評]奥平康弘 治安維持法小史(岩波現代文庫)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「治安維持法小史」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、憲法をご専門とする東京大学名誉教授であり、2015年に逝去された。本書は、2006年に文庫化されたものの、原著は1977年の出版であるから、当職がまだ赤ん坊の時出版されている。

著者は、「悪法だという評価を確実に成立させるためには、治安維持法とはなんであったのかという、事実の評価にかんする作業を、大いにおこなう必要がある」(はしがきⅴ頁。なお、傍点は省略。)と指摘する。
1925年に制定され、「制定後約三年たった一九二八(昭和三)年に、緊急勅令という明治憲法に独特な法形式により、大きな改正をうけ」(1頁)、1941年に全面改正された治安維持法は、当初は、日本共産党対策の法律として、その「本質が『結社』取締法にあ」った(68頁)治安維持法が、1930年代後半には、「日本共産党およびその周辺の諸組織の弾圧法たる性格を薄めて、別の性格の法へと変質してい」った(192頁)。その歴史的な背景や、京都学連事件、人民戦線事件、企画院事件、横浜事件といった事件を分析し、なぜ治安維持法が悪法であるのかを明らかにする。
これらの事件の教訓といえる、「人権が侵害されるとき、人権擁護の自由も侵害されるということ」(126頁)、「既成事実のまえで判決のもつ『修正』力は意外に小さいものでしかなかった」(234頁)との指摘は、現在でもあたっていると思う。弁護士として、常に意識をしなければならない点であろう。

そして、「戦後の日本社会は、自らの手で治安維持法体制を解体したわけではなく、また。自らの手で人権侵害責任者の裁きをおこなったわけではない」(288頁)との指摘は、今なお重い指摘である。共謀罪が問題になっている今だからこそ、なお重い指摘になっているといえる。内心を処罰することの危険性を感じる必要があるからである。

林浩靖法律事務所は、現行法に限らず、歴史的な教訓も押さえて業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2017年1月11日 水曜日

[書評]長沼伸一郎 経済数学の直感的方法 マクロ経済学編(講談社ブルーバックス)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「経済数学の直感的方法 マクロ経済学編」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、以前、書評をした「物理数学の直感的方法(普及版)理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬(講談社ブルーバックス)」(該当する記事は、こちら)の著者である長沼伸一郎氏である。

本書は、直観的に理解させることで有名な著者が、「マクロ経済学の『動的マクロ均衡理論』で、もう一つは金融工学のブラックショールズ理論」...がいわば『二大南海理論』としてそびえ立っているというのが、現在の経済学の姿」(5頁)という認識の下、「物理や天体力学の世界で成功した数学技法で使えそうなものを寄せ集めて作られた、という性格」を持つ経済数学(4頁)について、物理の思想から説き起こすという書物である。

当職は、大学は経済学部の出身なので、経済学を学んだわけであるが、「ケインズの大づかみの理論を『マクロ経済学』、均衡メカニズムを基本原理としてそれを下から積み上げていくものを『ミクロ経済学』として両者を分離し、前者は制作現場で実戦に使えるが、後者のミクロ経済学はアカデミックな世界の実験室のみで使える、基礎を探求するための学問」(46頁~47頁)という指摘は、聞いたことがなかった。ただ、大学生のときは、どちらかというとミクロ経済学の話への興味が強かったものの、社会に出てみるとマクロ経済学の話の方が、興味を持てるようになった理由が分かるように思えた。社会に出ると、どうしても実践に役立つ知識に引かれるものだからである。

そして、動的マクロ均衡理論のイメージを描き出す中で、経済数学の重要な部分が説明される。例えば、ここで取り上げられているラグランジュアンは、大学生のときに学んだが、正直、「やり方」しか分からなかった。ここでは、その盲点の一つである「『ラグランジュアンは基本的には2この変数で書かれ、それらは「一方の変数がもう一方の『変化率』になっている」という関係を満たしていなければならない』」(113頁)という指摘や「ラグランジュアンというものは基本的に『式の生成装置』」(178頁)という指摘は、ラグランジュアンについての理解を深めてくれる指摘であった。

更に、微分方程式、固有値、位相・関数解析といった分野についてのポイントを、「一番必要なのは、その基本思想が何を『目的』にしているのかを知ること」(314頁)という観点から説明されており、経済学を学ぶ上で、重要な数学を解説している。

経済学は、法学の隣接学問の1つであり、その理解は、法学の理解も豊かにしてくれるものといえます。林浩靖法律事務所では、法律に限らず、隣接分野についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2017年1月 4日 水曜日

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。
本年も、東京・池袋にて、皆様のために頑張る所存ですので、よろしくお願いいたします。

林浩靖法律事務所
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