所長ブログ

2015年1月26日 月曜日

[書評]我妻榮 新訂物権法(民法講義Ⅱ)(岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「新訂物権法(民法講義Ⅱ)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、以前書評をした「債権各論上巻(民法講義Ⅴ1)」(該当する記事は、こちら)と同じシリーズで、言わずと知れた我妻名誉教授の民法講義の一部をなす基本書で、民法学の金字塔というべき書物である。初版が書かれたのが昭和7年、有泉名誉教授の補訂が入った新訂版が書かれたのが昭和58年であるから、もう30年以上前の書物であるから、勿論、最新判例や法令の改廃などの情報が反映されているはずもない。

しかしながら、知識として持っていない問題が生じたときに考えるヒントが詰まっていることは、この本も変わりはない。例えば、物権の位置づけについて、「資本主義の発達と共に、次第に、物資の有する交換価値の利用を安全確実ならしめるような法律構成を与えられるようになった」(1頁)、「資本主義が高度化するに及び、物資の有する本来の利用価値を重視すべき要請が強くなり、物権の法律構成の重点は、新たに『所有』から『利用』へと再転しようとする傾向を示してきた」のような歴史的な経過を踏まえた論述がなされているので、例えば、我妻名誉教授の死後に現れた「証券化」なども、物資の「利用」価値を金銭化しようとするものであるように、考えるためのヒントは示されている。

民法は、弁護士の実務において、最も利用頻度の多い法律といってよい。当職も、考えたことのない問題に直面したときには、まず、確認するシリーズである。これからも、必要なときには、何度でも参照したい。

林浩靖法律事務所は、民事事件を多数取り扱っており、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。破産申立てに限らず、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2015年1月19日 月曜日

[書評]松下淳一 民事再生法入門[第2版](有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事再生法入門」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、東京大学大学院法学政治学研究科教授である。本書の初版は、2009年に出版され、当時は、民事再生法の基本的な事項を説明する良い本がなかったので、とても重宝した。確かに基本書としては、伊藤眞教授の「破産法・民事再生法」など信頼できる書物はあったが、「破産法と共通する部分の記述を省きつつ民事再生法のみを説明する初学者向けの本」(はしがきⅰ頁)は、当時も今も存在しない。その松下教授の「民事再生法入門」が改訂されたので、この機会に新版を読み直してみることにしたのである。

入門書としては適切な本で、また、比較的薄い本(B5版で本文215頁)なので、一気に読める本である。その意味で、民事再生法の良い入門書であると思う。とはいっても、各章に「コラム」と題して進んだ内容にも触れられており、中上級者にも使える本であろう。はしがきにもあるように、「進んだ応用問題を自分で考えることができるようになるためには、基本的事項の趣旨や根拠を十分に理解しておく必要がある」(はしがきⅱ頁)から、実務家や研究者も折に触れて目を通してみる価値のある書物だと思う。

林浩靖法律事務所では、基本を大切にして、依頼者の皆様に、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2015年1月12日 月曜日

[書評]佐藤優 世界史の極意(NHK出版新書)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「世界史の極意」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、以前、書評をした「新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析篇(中央公論新社)」(該当する記事はこちら)と同じく、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏の著書である。

著者が言いたいことは、最後の「近代の宗教である資本主義やナショナリズムに殺されないために、私たちはアナロジーを熟知して、歴史を物語る理性を鍛え上げていかなければならない」(234頁)という1文にまとめられていると思うが、全く、同感である。カール・マルクスは、「歴史は繰り返す。最初は悲劇として、二度目は笑劇(しょうげき)として」とルイ・ボナパルトのブリューメル18日に記しているが、まさに、歴史は繰り返すのである。しかし、当たり前だが、歴史は全く同じに繰り返すわけではない。繰り返していることを把握しなければならないのである。近隣諸国との関係は好転する兆しはなく、また、世界的にも景気は減速局面にあり、通貨切り下げ競争という、第2次世界大戦前夜と似た状況になってきている。今こそ、歴史をアナロジーでとらえ、第2次世界大戦前のような失敗をしないようにしなければ、軍国主義へ逆戻りしかねないのではないかと心配になる。

なお、本書の内容には、特別、思想的なものはないので、誰にでもおすすめできるものであり、自分の意見の説得力を増すための方法を考えることができると思う。

年も明けたばかりなので、仕事とは関係ない書籍について、1冊書評をしました。大きい話も重要ですが、まずは、お困りごとを抱えた皆様のために、今年も、東京・池袋所在の弊事務所で、目の前のことを一つずつ、こなしていきたいと思います。

林浩靖法律事務所
弁護士 林 浩靖

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2015年1月 5日 月曜日

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。
本年も、東京・池袋にて、皆様のために頑張る所存ですので、よろしくお願いいたします。

林浩靖法律事務所
弁護士 林 浩靖

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2014年12月29日 月曜日

[書評]佐竹健治・堀宗朗編 東日本大震災の科学(東京大学出版会)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「東日本大震災の科学」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、東京大学の教授・准教授8名の共同執筆で、「東京大学前期課程の全学自由研究ゼミナールに基づ」く書物である(はしがきⅲ頁)。元々が、大学1・2年生向けになされたゼミを下敷きにするものであるから、特殊な前提知識を要求されるものではなく、高校の地学の参考書を手許において読めば、誰でも読み進めることができるだろう。

しかしながら、内容の程度は高く、また、扱う範囲も多岐にわたっている。まず、東北地方太平洋沖地震の地震像として、①「震源破壊域は南北約五〇〇㎞、東西二〇〇㎞に広がる。とくにすべりの大きい領域破壊開始点から海溝まで及び、その量は五〇mを超えた」、「浅い領域と深い領域とですべり方が異なる。大きなすべりが生じた浅部での破壊は比較的ゆっくりであるが、深部側では速い動きの破壊が生じ、強い地震動を生成した」(ともに3頁)との2点の特徴を示し、説明を加えている。

その上で、次に、地震から津波に話題を移し、津波地震と貞観地震タイプの地震の2つの種類があることを示し、「二〇一一年東北地方太平洋沖地震は、一八九六年明治三陸地震と同様な津波地震タイプと、八六九年貞観地震タイプの地震が同時に発生し、連動することによって規模が大きくなった」(60頁)と説明する。また、「津波の高さ」には3種類あること(75頁)等もきちんと説明されている。

そして、防災や経済活動への影響なども説明されており、現在、東日本大震災のメカニズムを知るためには、手に取りやすい書物といえるだろう。当職も、本書で得た知識を活かしながら、弁護士として、原発事故被災者のためにさらに頑張る所存です。

また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。本年も最後になりました。良いお年をお過ごしください。

弁護士 林 浩靖

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