所長ブログ

2014年10月20日 月曜日

[書評]上田徹一郎 民事訴訟法(第7版)(法学書院)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、上田徹一郎関西学院大学名誉教授の「民事訴訟法(第7版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、以前、本ブログでも触れたことがあるように(該当する記事はこちら)、2013年4月に亡くなられた上田名誉教授の基本書である。当職が、受験生のときは、第2版だったが、その後、何度改訂され、現在は7版になっている。少し時間ができたので、最新版を購入して読み返した。

もっとも、上田名誉教授のご体調の問題もあり、第6版からは、元裁判官でもある稲葉一人中京大学法科大学院教授が改訂作業を行っている。この本は、稲葉教授が第6版のはしがきでも述べているように「長く実務・研究者に影響力を与え続けてきた」(はしがき3頁)書物であり、判例・通説がきちんと明示されているので、実務家には使いやすい書物である。もっとも、惜しむらくは、最後の改訂が2011年6月に行われ、その後に、国際裁判管轄権についての立法化を行う民事訴訟法改正(平成23年改正)がなされたので、この点については、当然ながら、触れられていない。せっかく、途中から稲葉教授が改訂に関与されていたのだから、今後の上田名誉教授の遺志を継いで、適宜に法改正や新判例に対応した改訂を行い、この本を息の長い書物にして頂ければと思う。

民事訴訟は、弁護士にとって最大の業務であることは間違いなく、林浩靖法律事務所は、民事訴訟を、多数取り扱っており、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年10月13日 月曜日

[書評]伊藤眞 破産法・民事再生法(第3版)(有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「破産法・民事再生法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、以前書評をした「民事訴訟法」(該当する記事は、こちら)、「会社更生法」(該当する記事は、こちら)と同じ著者の「破産法・民事再生法」である。著者は、現在は、早稲田大学大学院法務研究科客員教授であるが、採用している見解がおおむね穏当なものであることもあり、実務家にとって信頼できる体系書である。

本書は、「清算型手続の一般法である破産法と再生型手続の一般法である民事再生法を対象」(はしがき7頁)とした体系書である。この伊藤教授の基本書と東京地裁民事20部の裁判官、書記官による「破産管財の手引」、東京弁護士会倒産法部による「破産申立マニュアル」は、「破産法三種の神器」の一つと言ってもいい書物である。

さらに、「第1部 序論」では、9頁以下に事例をのせ、また、1162頁以下には、手続の概要として、破産、再生、個人再生の各手続の流れ図を掲載するなど、イメージをつかめるように配慮されている。

当職は、従前、同じ本の初版を用いていたが、かなり改訂され、内容が増加しているので、第3版を新しく購入した。初版よりもますます頼りになる体系書になっていると思う。

林浩靖法律事務所は、破産に関する業務を、多数取り扱っており、最新の情報をきちんとフォローしていますので、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。破産申立てに限らず、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

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2014年10月 6日 月曜日

[書評]我妻榮 債権各論上巻(民法講義Ⅴ1)(岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「債権各論上巻(民法講義Ⅴ1)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、言わずと知れた我妻名誉教授の民法講義の一部をなす基本書で、民法学の金字塔というべき書物である。書かれたのが昭和29年と、もう60年前で、増刷の際に若干の補正はなされているとは思うが、それでも、基本となる情報は60年前のものであるから、勿論、最新判例や法令の改廃などの情報が反映されているはずもない。

しかしながら、この本(に限らず、我妻名誉教授の民法講義シリーズ全体)の有用性は、情報が古くなっても失われるものではないと思う。我妻名誉教授の民法講義は、民法学ならず、経済史学やマルクス主義などの周辺分野の知識も踏まえて、現実に即した解釈になるように配慮されている。例えば、「金融資本による全産業の支配という現象を生じるに至りつつある」(16頁。なお、旧字体は、現在の字体に直した。)という記述は、明らかに、レーニンの「帝国主義論」を踏まえての記述である。そのために、知識として持っていない問題が生じたときに考えるヒントが詰まっているのである。最近の基本書は、勿論、有用ではあるが、それは「情報」としての意味においてであり、「知識」という意味で、なお、我妻名誉教授の民法講義シリーズの有用性は失われていないと思う。

民法は、弁護士の実務において、最も利用頻度の多い法律といってよい。当職も、考えたことのない問題に直面したときには、まず、確認するシリーズである。これからも、必要なときには、何度でも参照したい。

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2014年9月29日 月曜日

[書評]宮本憲一 戦後日本公害史論(岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「戦後日本公害史論」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本の著者は、大阪市立大学名誉教授で、その専門は、環境経済学・財政学である。環境問題は、すぐれて学際的な分野であり、法律学、経済学、医学、科学など多数の分野が関連する。さらに、公害問題は深刻な社会問題であり、本書は、「この公害問題と対策の歴史の記録」(1頁)であり、「その歴史的教訓を明らかにし」「現実への警鐘」(1頁)とするものである。「公害裁判は問題の解決に大きな役割を果たしただけでなく、公害論を前進させた」(746頁)から、4大公害裁判(第4章)を独立の章として取り扱うなど、環境法上、重要な裁判については、判例集では知ることのできない詳細な事実関係や、和解の場合でもその内容などを知ることができる。原告がどのような法律構成を考えたかが、判決内容に劣らず重要な環境法の分野では、このような詳細が述べられている書物は、環境法の体系書や判例集とは異なる意味で有意義な書物といえる。
著者の専門の関係から、「学際的な分野を政治経済学の視点で裁断している」(745頁)面があり、また、高知地方裁判所を、通常の略称である「高知地裁」とせずに、「高知裁判所」(374頁)とする等、法律の世界の一般的な使い方とは異なる用語の使い方をしているような部分もあるが、それでもこの書物の持つ意義を下げるものではないと思う。

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2014年9月22日 月曜日

[書評]淡路剛久・大塚直・北村喜宣編 環境法判例百選(第2版)(有斐閣)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「環境法判例百選(第2版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、有斐閣が出している判例百選シリーズの1冊で、主に、学習者向けの判例集である。判例百選シリーズは、学習者向けではあるが、当該分野について、最初に判例を概観し、どのような重要判例があるかを押さえるには、最良のシリーズといえる。

本書は、所謂、判例のみならず、公害等調整委員会の重要な採決も収録しており、環境法においては、公害等調整委員会の裁決も、権利保護の一翼を担い、かなりの重要性があるので、ここまで網羅されている判例集はありがたいといえる。基本書によっては、判例索引に公害等調整委員会の裁決まで含めているものもあるが、判例索引は、判例のみ掲載しているものもあり、また、判例集には公害等調整委員会の採決は掲載されていないものもあるので、ここまで取り上げられているのは、本当にありがたいことである。

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