所長ブログ

2017年3月22日 水曜日

[書評]山口栄一 イノベーションはなぜ途絶えたか-科学立国日本の危機(ちくま新書)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「イノベーションはなぜ途絶えたか-科学立国日本の危機」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、京都大学教授であり、イノベーション理論と物性物理学をご専門とされる。著者の山口教授は、福島第一原発事故の原因に関する論考も書かれているが、本書は、もう少し大きい話で、「大きく通底するテーマ...はイノベーションの喪失と科学の危機」(26頁)とされる。「イノベーション・ダイヤグラムを中核とするイノベーションの理論と、東電福島第一原発事故などを普遍化して見出したトランス・サイエンスの理論とが実は同根であった」(222頁~223頁)という結論に至る中で、技術経営、トランス・サイエンスなどの問題を含む、科学と社会の関係性を論じている書物であり、福島第一原発事故の問題のみならず、学問と社会の関わり方一般に関して、いろいろと考えさせられる書物であった。新書本であるが、科学と社会の関係性について「基本書」としうる内容の濃い書物である。数学、物理学、情報学、化学、生命科学、心理学、哲学、経済学、法学、環境学を10のコア学問とし(202頁)、その他の学問を考えていることも、基礎学問とは何かを考える上で参考になる。

林浩靖法律事務所では、法律以外の点についても知識を深めるように、日々、研鑚に努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2017年3月15日 水曜日

[書評]司法研修所編 民事弁護教材 改訂 民事保全(補正版)(日本弁護士連合会)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事弁護教材 改訂 民事保全(補正版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

「本書は、民事弁護教官が、もっぱら弁護士としての経験にもとづき、司法修得生の教材のため実務に主眼をおいて編纂したもの」(まえがき)であるから、理論的な深みはなく、また、ページ数も本文110頁と極めて薄いものであるから、入門書レベルの書物ではある。もっとも、民事保全法については、学生を対象とする民事執行法と併せた入門書は、あまりにも薄すぎて、かえって分かりにくい書物が多いこともあり、民事保全法の入門書・概説書としては、ほぼ唯一、役に立つ書物と言える。

民事保全は、進行が極めて速い手続であり、また、迅速に申立てをしないと無意味になりかねないところがあるので、非常に神経を使う分野である。

林浩靖法律事務所では、基本を押さえた十分な法的サービスを提供するように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2017年3月 8日 水曜日

[書評]山内弘隆・竹内健蔵 交通経済学(有斐閣アルマ)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「交通経済学」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、山内弘隆一橋大学教授と竹内健蔵東京女子大学教授の共著で、「応用ミクロ経済学の色彩が強い」(314頁)交通経済学の基礎を概説する書物である。出版から10年以上が経過しているが、まだ、色褪せていない。

本書は、「ミクロ経済学の基礎理論に基づいて交通を分析」(はしがきⅰ頁)する書物であるが、「現実政策、具体的施策を念頭に置いて議論」(はしがきⅰ頁)しているので、現実的な議論が展開されており、交通政策にも利用できる書物である。そして、「読者を、計量を含めた経済学的な分析の『入り口』に導くこと」(はしがきⅱ頁)を目標に掲げている。

経済学的な分析が万能なものではないことは、本書でも、経済学で用いられる手法である「費用便益分析は資源配分の効率化の手段としては実に有効な武器であるが、所得分配の公正化の手段としては実に無力な存在」(304頁)と述べられていることからも明らかであるが、経済学的な分析が政策決定にあたり、一つの有用な手段であることもまた事実である。

経済学は、法学の隣接学問の1つであり、その理解は、法学の理解も豊かにしてくれるものといえます。林浩靖法律事務所では、法律に限らず、隣接分野についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2017年3月 1日 水曜日

[書評]関俊彦 商法総論総則(第2版)(有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「商法総論総則(第2版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、東北大学名誉教授であり、ご専門は商法である。商法「総論を重視した総則の単独著書が...急減」(はしがきⅱ頁)している中で、商法総論だけで100頁以上に及ぶ近年では珍しい商法総則の基本書である。

平成17年改正において、「商法総則に定められていた...規定が、会社(外国会社を含む)を主体とするものと、その他の承認を主体とするものに二分され、前者に関しては実質的に商法と同じ内容の条文が会社法の中に総則として定められ、商法中のこれらの規定は会社以外の商人にのみ適用されるようになった」(はしがきⅰ頁)ところ、「本書は『商法総論総則』と銘打っているが、商法と実質的に重複した会社法総則の規定も包合して論じている」(はしがきⅰ頁)書物である。

商法総論は、商法(ここでいう「商法」は、会社法、手形法、小切手法、保険法も含む広義の意味の商法のことである)について、新たな問題を考える上での視点のヒントを与えてくれるものであるから、バックボーンとして参照すべきものである。

林浩靖法律事務所では、新たな問題にも対応できる基本を押さえた十分な法的サービスを提供するように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2017年2月22日 水曜日

[書評]西木正明 オホーツク諜報船(角川文庫)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「オホーツク諜報船」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

かつて、当職がまだ小学生だった頃、北海道の向こうには、ソビエト社会主義共和国連邦、ソ連という国があった。本書は、その「ソ連国境警備隊に情報提供や物資運搬に協力する。その見返りに、北方領土水域での自由操業が認められ」たレポ船についての、ノンフィクション・ノベルである。人名などは、一部仮名になっているが、内容自体は、取材に基づくもので、ほぼ事実のようである。

日本は太平洋戦争の敗戦により、北方領土の実効支配を失い、北方領土は今もロシアの実効支配下にある。そのため、北方領土近海の漁場を失った漁業者たちが、生活の維持のため、東西冷戦、千島・樺太に残留し帰国できなかった朝鮮人などが織りなす中で、ソ連のレポ船と活動していき、国家の動きの中で、日本で、ソ連でときに犯罪者になり、ときには命を落としていく有り様が紡がれている。

ソ連は、1991年に崩壊し、レポ船も無くなった。ただ、今日でも、闇の世界は残っているはずである。国際化の時代、その明と暗を考えさせられる書物であった。

林浩靖法律事務所では、法律に限らず、隣接分野についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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