所長ブログ
2013年11月 7日 木曜日
[書評]日本科学技術ジャーナリスト会議 4つの「原発事故調」を比較・検証する 福島原発事故13のなぜ?(水曜社)
1冊、書評をしたいと思います今回、書評をするのは、「4つの『原発事故調』を比較・検証する 福島原発事故13のなぜ?」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。
福島第一原発の原発事故は、未曽有の大惨事だったから、調査報告書も複数出ている。国会事故調による報告書、政府事故調による中間・最終報告書、東電事故調による報告書、そして、民間の「福島原発事故独立検証委員会」の報告書の4つである。
ただ、4つの事故調報告書ともに、相当に分厚く、なかなか手軽に読むことは難しいし、また、内容が少しずつ違うので、どこが違うのかを頭に入れて読む必要がある。そのため、最初の導入としてや、あるいは、4つの事故調報告書の内容を手軽に知りたい場合には、使いやすい本である。
例えば、国会事故調は、「野党の主導で設けられ」(36頁)、そのために歴代の自民党政権の責任には踏み込んでいないことや、当時の官邸(菅首相)などへは、厳しい評価が目立つこと、東電事故調は、「全編『責任転嫁の羅列』というべきもの」(まえがき)であること、政府事故調は、福島「第二原発との比較で第一原発の操作ミスをクローズアップさせている」(33頁)など、それぞれの特徴をきちんと指摘している。
そして、現状でも、福島第一原発の状況が確認できないためやむを得ない面はあるが、残念ながら、「各事故調報告書の内容はともに真相解明からはほど遠い」(36頁)こともきちんと指摘している。
福島第一原発の原発事故については、日本で起こった世界でも類を見ない大事故であるから、日本人であれば誰でもある程度は内容を把握する必要があるだろう。当職は、並行して、国会事故調報告書を読んでいる(原発事故の被災者で起こす予定の集団訴訟の準備という面もあるが)が、事故調報告書を読む余裕がない方も、せめて本書は手にとって欲しいと思う。
当職は、本書で得て知識も生かして、さらに、各事故調報告書の分析をしながら、原発事故被災者のためにさらに頑張る所存ですし、また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
福島第一原発の原発事故は、未曽有の大惨事だったから、調査報告書も複数出ている。国会事故調による報告書、政府事故調による中間・最終報告書、東電事故調による報告書、そして、民間の「福島原発事故独立検証委員会」の報告書の4つである。
ただ、4つの事故調報告書ともに、相当に分厚く、なかなか手軽に読むことは難しいし、また、内容が少しずつ違うので、どこが違うのかを頭に入れて読む必要がある。そのため、最初の導入としてや、あるいは、4つの事故調報告書の内容を手軽に知りたい場合には、使いやすい本である。
例えば、国会事故調は、「野党の主導で設けられ」(36頁)、そのために歴代の自民党政権の責任には踏み込んでいないことや、当時の官邸(菅首相)などへは、厳しい評価が目立つこと、東電事故調は、「全編『責任転嫁の羅列』というべきもの」(まえがき)であること、政府事故調は、福島「第二原発との比較で第一原発の操作ミスをクローズアップさせている」(33頁)など、それぞれの特徴をきちんと指摘している。
そして、現状でも、福島第一原発の状況が確認できないためやむを得ない面はあるが、残念ながら、「各事故調報告書の内容はともに真相解明からはほど遠い」(36頁)こともきちんと指摘している。
福島第一原発の原発事故については、日本で起こった世界でも類を見ない大事故であるから、日本人であれば誰でもある程度は内容を把握する必要があるだろう。当職は、並行して、国会事故調報告書を読んでいる(原発事故の被災者で起こす予定の集団訴訟の準備という面もあるが)が、事故調報告書を読む余裕がない方も、せめて本書は手にとって欲しいと思う。
当職は、本書で得て知識も生かして、さらに、各事故調報告書の分析をしながら、原発事故被災者のためにさらに頑張る所存ですし、また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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2013年11月 1日 金曜日
船引町にて
今日は、上野駅16時46分発の新幹線で、福島県田村市船引町へ日帰りの出張に行きました。
田村市は、以前の記事(該当記事は、こちら)にも書かせて頂きました通り、平成の大合併の結果生まれた町で、田村市のうち、都路町の一部が避難指示解除準備区域に現在も指定されており、都路町の残り全域と、常葉町及び船引町の一部が、以前、緊急時避難準備区域に指定されていました。緊急時避難準備区域は、2011年9月30日に区域を解除され、翌12年8月には慰謝料も打ち切られたものの、放射線量が下がっていない地域も多く、今も、避難生活を続けている方が、多数、いらっしゃいます。そのような方が生活する仮設住宅が船引町にあり、都路町からの避難者のための説明会をするために、船引町の仮設住宅に行きました。(目的地に着いた時には、既に日が暮れている日帰り出張は初めてです。)
田村市の場合、一部地域のみ、避難指示解除準備区域や旧緊急時避難準備区域の指定がなされ、大部分の地域は、指定されていないこともあり、風評被害などを市が恐れているのか、あまり積極的に住民救済に動いていないという印象を受けますし、そのために、ますます住民の不安が募るといった状況です。
平成の大合併で、大きくまとまったものの、かえって小回りが利かず、きめの細かい住民サービスは、できなくなったという印象です。飯館村などは、やはり、村の全域が区域指定されていることもあり、地方公共団体の必死さが伝わりますが、一部地域のみが区域指定されている地域の場合、地方公共団体にも早く終わりにしたいと思っているところがあるのではないかと感じることがあります。
東京にいると、既に、原発事故のことが風化しているのではないかと感じることがあります。ただ、福島第一原発の原発事故は、廃炉ができていない以上、まだ続いているわけで、風化させてはいけない問題だと思います。
東京・池袋所在の林浩靖法律事務所は、困っている皆様に常に寄り添う法律事務所ですので、お困りごとがございましたら、ぜひ、ご相談ください。そして、原発事故の被災者の方にも、寄り添っていきたいと思います。
弁護士 林 浩靖
田村市は、以前の記事(該当記事は、こちら)にも書かせて頂きました通り、平成の大合併の結果生まれた町で、田村市のうち、都路町の一部が避難指示解除準備区域に現在も指定されており、都路町の残り全域と、常葉町及び船引町の一部が、以前、緊急時避難準備区域に指定されていました。緊急時避難準備区域は、2011年9月30日に区域を解除され、翌12年8月には慰謝料も打ち切られたものの、放射線量が下がっていない地域も多く、今も、避難生活を続けている方が、多数、いらっしゃいます。そのような方が生活する仮設住宅が船引町にあり、都路町からの避難者のための説明会をするために、船引町の仮設住宅に行きました。(目的地に着いた時には、既に日が暮れている日帰り出張は初めてです。)
田村市の場合、一部地域のみ、避難指示解除準備区域や旧緊急時避難準備区域の指定がなされ、大部分の地域は、指定されていないこともあり、風評被害などを市が恐れているのか、あまり積極的に住民救済に動いていないという印象を受けますし、そのために、ますます住民の不安が募るといった状況です。
平成の大合併で、大きくまとまったものの、かえって小回りが利かず、きめの細かい住民サービスは、できなくなったという印象です。飯館村などは、やはり、村の全域が区域指定されていることもあり、地方公共団体の必死さが伝わりますが、一部地域のみが区域指定されている地域の場合、地方公共団体にも早く終わりにしたいと思っているところがあるのではないかと感じることがあります。
東京にいると、既に、原発事故のことが風化しているのではないかと感じることがあります。ただ、福島第一原発の原発事故は、廃炉ができていない以上、まだ続いているわけで、風化させてはいけない問題だと思います。
東京・池袋所在の林浩靖法律事務所は、困っている皆様に常に寄り添う法律事務所ですので、お困りごとがございましたら、ぜひ、ご相談ください。そして、原発事故の被災者の方にも、寄り添っていきたいと思います。
弁護士 林 浩靖
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2013年10月25日 金曜日
[書評]田中亘編著 数字でわかる会社法(有斐閣)
久しぶりに1冊、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「数字でわかる会社法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。
会社法は、実務に出て、たくさんの経験を積む機会があるとよく分かるようになるのだが、「会社法の問題は、往々にして、多数の当事者の利害が複雑に絡み合うため、文章だけで利害状況を分析しようとしても容易でないことが多い」(2頁)という面があり、当職も、受験生のときには、何が言いたいのかよく分からないという部分や、しっくりこないという面が多く残る法律であった。
そこで、本書では、「利害関係を明確化」(1頁)することを目的として、数字を用いて議論すること、及び、規範的な議論をするために、「効率性という基準」(9頁)を取り入れることを提案し、それを、株式価値の算定や制度の存在理由を考える上で、活かそうということが試みられている。会社法は、そもそも、営利社団法人である会社を規律するための法律であり、「営利」を目的にするということは、かみ砕いていえば、金儲けのためということですから、「効率性」は少なくとも、会社法の問題について、判断する一つの基準にはなるだろう。
そして、会社法に隣接する学問である「経済学(特にファイナンス理論、統計学、会計学(簿記)」(11頁)は、いずれも、数字を用いて議論している学問であるから、会社法においても、数字を用いて分析することは有益であると思う。少なくとも、会社法の基本的な制度の存在理由として、一つの説明が試みられている本であることは間違いない。また、簿記や統計学などの基本的なことを、一通り説明している点も、学生向けには有益であろう(ただ、統計学については、「第10章 実証分析入門」で説明されているが、これだけで理解するのは厳しく、統計学や計量経済学の入門書を別途読まないと、理解できないと思う。当職は、大学時代に統計学の講義を受けたことがあるが、それでも、本書の第10章の内容を理解するのは厳しかった。)。ただ、第10章も、「実証分析によって検証できる関係は、基本的に相関関係」(256頁)であって、因果関係ではないことをきちんと指摘し、また、「実証分析といえども相当に主観的な部分がある」(278頁)という点もきちんと指摘し、数字による分析にも限界があることまで、きちんと指摘しているので、その意味で、有益ではあると思う。
会社法の理解には、経済学(特にファイナンス理論、統計学、会計学(簿記)といった、数字を使う分野のほか、商業登記法や金融商品取引法といった隣接する法分野についても押さえる必要があるが、数字を使う分野については、良くまとまっており、会社法の中で、通常の基本書を読んでも、あいまいなまま残っていしまう部分について、一つの説明をしている点で、有益な本の一つとは思う。
会社法の基本的な書籍を一冊読んだ方に、ぜひ読んでほしい書籍である。
林浩靖法律事務所は、会社法に関する業務を、多数取り扱っており、隣接分野の情報収集も常に行っておりますので、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。
弁護士 林 浩靖
会社法は、実務に出て、たくさんの経験を積む機会があるとよく分かるようになるのだが、「会社法の問題は、往々にして、多数の当事者の利害が複雑に絡み合うため、文章だけで利害状況を分析しようとしても容易でないことが多い」(2頁)という面があり、当職も、受験生のときには、何が言いたいのかよく分からないという部分や、しっくりこないという面が多く残る法律であった。
そこで、本書では、「利害関係を明確化」(1頁)することを目的として、数字を用いて議論すること、及び、規範的な議論をするために、「効率性という基準」(9頁)を取り入れることを提案し、それを、株式価値の算定や制度の存在理由を考える上で、活かそうということが試みられている。会社法は、そもそも、営利社団法人である会社を規律するための法律であり、「営利」を目的にするということは、かみ砕いていえば、金儲けのためということですから、「効率性」は少なくとも、会社法の問題について、判断する一つの基準にはなるだろう。
そして、会社法に隣接する学問である「経済学(特にファイナンス理論、統計学、会計学(簿記)」(11頁)は、いずれも、数字を用いて議論している学問であるから、会社法においても、数字を用いて分析することは有益であると思う。少なくとも、会社法の基本的な制度の存在理由として、一つの説明が試みられている本であることは間違いない。また、簿記や統計学などの基本的なことを、一通り説明している点も、学生向けには有益であろう(ただ、統計学については、「第10章 実証分析入門」で説明されているが、これだけで理解するのは厳しく、統計学や計量経済学の入門書を別途読まないと、理解できないと思う。当職は、大学時代に統計学の講義を受けたことがあるが、それでも、本書の第10章の内容を理解するのは厳しかった。)。ただ、第10章も、「実証分析によって検証できる関係は、基本的に相関関係」(256頁)であって、因果関係ではないことをきちんと指摘し、また、「実証分析といえども相当に主観的な部分がある」(278頁)という点もきちんと指摘し、数字による分析にも限界があることまで、きちんと指摘しているので、その意味で、有益ではあると思う。
会社法の理解には、経済学(特にファイナンス理論、統計学、会計学(簿記)といった、数字を使う分野のほか、商業登記法や金融商品取引法といった隣接する法分野についても押さえる必要があるが、数字を使う分野については、良くまとまっており、会社法の中で、通常の基本書を読んでも、あいまいなまま残っていしまう部分について、一つの説明をしている点で、有益な本の一つとは思う。
会社法の基本的な書籍を一冊読んだ方に、ぜひ読んでほしい書籍である。
林浩靖法律事務所は、会社法に関する業務を、多数取り扱っており、隣接分野の情報収集も常に行っておりますので、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。
弁護士 林 浩靖
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2013年10月18日 金曜日
仙台出張
東京・池袋所在の林浩靖法律事務所の弁護士の 林 です。
今日は、国選弁護の接見の件で、仙台へ出張することになりました。刑事事件は、簡易裁判所・地方裁判所で行われる第一審から、高等裁判所で行われる控訴審、そして、最高裁判所で行われる上告審と進みますが、最高裁で行われる上告審については、被告人の拘置場所を移さない取扱いになっています。そして、今回、当職が受任した国選弁護の被告人は、仙台で控訴審が行われた事件の上告審なので、被告人は、仙台の拘置所で拘置されています。
上告審の弁護では、被告人と接見せず、手紙でのやり取りで済ませることも許されているのですが、今回は、内容的に、被告人の方と接見する方がいいと判断したので、仙台まで出かけていくことになりました。
東北新幹線には、「はやぶさ」がデビューしていましたが、今までは、東北新幹線を使う場合でも、出張先は福島だったので、はやぶさに乗る機会がありませんでしたが、今回、初めて、はやぶさに乗る機会を得ました。大宮を出ると次は仙台。早くて、快適でした。
仕事で仙台へ行くのは初めてでしたが、出張自体は、楽しめました。あとは、被告人のために頑張るだけです。
当事務所では、必要なところへは、きちんと出張しますので、東京近郊の所在ではない方も、お困りの際は、ご相談ください。
今日は、国選弁護の接見の件で、仙台へ出張することになりました。刑事事件は、簡易裁判所・地方裁判所で行われる第一審から、高等裁判所で行われる控訴審、そして、最高裁判所で行われる上告審と進みますが、最高裁で行われる上告審については、被告人の拘置場所を移さない取扱いになっています。そして、今回、当職が受任した国選弁護の被告人は、仙台で控訴審が行われた事件の上告審なので、被告人は、仙台の拘置所で拘置されています。
上告審の弁護では、被告人と接見せず、手紙でのやり取りで済ませることも許されているのですが、今回は、内容的に、被告人の方と接見する方がいいと判断したので、仙台まで出かけていくことになりました。
東北新幹線には、「はやぶさ」がデビューしていましたが、今までは、東北新幹線を使う場合でも、出張先は福島だったので、はやぶさに乗る機会がありませんでしたが、今回、初めて、はやぶさに乗る機会を得ました。大宮を出ると次は仙台。早くて、快適でした。
仕事で仙台へ行くのは初めてでしたが、出張自体は、楽しめました。あとは、被告人のために頑張るだけです。
当事務所では、必要なところへは、きちんと出張しますので、東京近郊の所在ではない方も、お困りの際は、ご相談ください。
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2013年10月11日 金曜日
[書評]フリードリッヒ・リスト(小林昇訳)経済学の国民的体系(岩波書店)
久しぶりに1冊、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、ドイツ経済学史上の古典と言ってよい、フリードリッヒ・リストの「経済学の国民的体系」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。
イギリスのアダム・スミスは自由貿易論を唱えたが、これに対して、19世紀当時の後進国であるドイツのフリードリッヒ・リストは、経済発展には段階があり、後進国は、保護関税によって、先進国と同じ段階に並ぶまでは、自由貿易に転じるわけにはいかないということを、当時のドイツのために理論化しようとした。
その根本は、「経済学は哲学と政策と歴史との上に立脚する」(45頁)という立場を前提に、国民経済の発展には段階があり、「富」と「富を生み出す力」を区別して、「富を作り出す力は...富そのものよりも無限に重要」(197頁)と考え、「富を作り出す力」を育成するために、保護関税を正当化しようとするものである。
勿論、リストが本書を書いた時代と現代には、異なる点がある。「植民地」は、現代には、ほとんど存在しないし、また、覇権国は、当時のイギリスから米国に変わった。しかしながら、当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したとの理由を分析し、アダム・スミスが唱えた自由貿易論が、普遍的な経済理論ではなく、あくまでイギリスの繁栄のためにあることをきちんと押さえている点は、自由貿易主義を極限まで進めようとした新自由主義の限界を明らかにしているといえ、リーマン・ショック後の世界を考える上で、役に立つと思う。「国家」や「制度」に重きを置いている点で、法律がなぜ必要なのかということも考えさせられる書物である。当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したことと、現代の覇権国である米国が、TPPを推進しようとしていることの共通点を考えさせられるものでもある。
将来、世界政府が実現し、世界の全ての地域が一つの国になれば、国内問題と国際問題の区別は無くなるのかもしれない。しかしながら、このような世界政府が実現するのは、」遠い将来の問題であって、少なくとも、近い将来に実現する可能性はないだろう。そのような中で、純粋な資本主義が進展することは、世界中で格差を拡大することになりかねない。
マルクスが考えた共産主義とは異なる処方箋で、資本主義の問題点を克服しようとしたリストの考え方は、現代においても学ぶ点が多いと思う。
新自由主義の下、格差が拡大した現代だからこそ、リストの思想が再評価されるべきだと思う。
訳者が、「訳注と訳者解説と索引(解説つき)との三者が相俟ってコンメンタールの役目を果たす」(訳序ⅸ頁)ことを目的に編集した本書を手に取って頂けると嬉しく思います。そして、当職も、格差問題についても、法律家の立場から、その解決に少しでも貢献できるようにしたいと思います。もちろん、それ以外の問題についても、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
イギリスのアダム・スミスは自由貿易論を唱えたが、これに対して、19世紀当時の後進国であるドイツのフリードリッヒ・リストは、経済発展には段階があり、後進国は、保護関税によって、先進国と同じ段階に並ぶまでは、自由貿易に転じるわけにはいかないということを、当時のドイツのために理論化しようとした。
その根本は、「経済学は哲学と政策と歴史との上に立脚する」(45頁)という立場を前提に、国民経済の発展には段階があり、「富」と「富を生み出す力」を区別して、「富を作り出す力は...富そのものよりも無限に重要」(197頁)と考え、「富を作り出す力」を育成するために、保護関税を正当化しようとするものである。
勿論、リストが本書を書いた時代と現代には、異なる点がある。「植民地」は、現代には、ほとんど存在しないし、また、覇権国は、当時のイギリスから米国に変わった。しかしながら、当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したとの理由を分析し、アダム・スミスが唱えた自由貿易論が、普遍的な経済理論ではなく、あくまでイギリスの繁栄のためにあることをきちんと押さえている点は、自由貿易主義を極限まで進めようとした新自由主義の限界を明らかにしているといえ、リーマン・ショック後の世界を考える上で、役に立つと思う。「国家」や「制度」に重きを置いている点で、法律がなぜ必要なのかということも考えさせられる書物である。当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したことと、現代の覇権国である米国が、TPPを推進しようとしていることの共通点を考えさせられるものでもある。
将来、世界政府が実現し、世界の全ての地域が一つの国になれば、国内問題と国際問題の区別は無くなるのかもしれない。しかしながら、このような世界政府が実現するのは、」遠い将来の問題であって、少なくとも、近い将来に実現する可能性はないだろう。そのような中で、純粋な資本主義が進展することは、世界中で格差を拡大することになりかねない。
マルクスが考えた共産主義とは異なる処方箋で、資本主義の問題点を克服しようとしたリストの考え方は、現代においても学ぶ点が多いと思う。
新自由主義の下、格差が拡大した現代だからこそ、リストの思想が再評価されるべきだと思う。
訳者が、「訳注と訳者解説と索引(解説つき)との三者が相俟ってコンメンタールの役目を果たす」(訳序ⅸ頁)ことを目的に編集した本書を手に取って頂けると嬉しく思います。そして、当職も、格差問題についても、法律家の立場から、その解決に少しでも貢献できるようにしたいと思います。もちろん、それ以外の問題についても、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。
弁護士 林 浩靖
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